研究概要 |
「人工DNAシャペロン」発現ライブラリーを構築するために、大腸菌DNA結合蛋白質HUのDNA結合領域のアミノ酸配列(19アミノ酸残基)をランダムペプチド配列に変換した。ランダムペプチド配列の導入には、HU遺伝子のDNA結合領域をコードしているDNA領域をランダムオリゴヌクレオチドに置換する方法とミューテーター大腸菌内でHU遺伝子を含むプラスミドDNAを複製させランダム変異を導入する方法(Iwaki et al.,1996)を用いた。当初の予定に加えてミューテーター大腸菌法を変異導入法として用いたのは、人工DNAシャペロン発現ライブラリーの中に含まれるランダムペプチド配列の種類を偏らせないためである。こうして作製された「人工DNAシャペロン」発現ライブラリーをHU欠損大腸菌内で発現させ、サウスウェスタン法によってNiR遺伝子断片(プロモーター領域およびコーディング領域)に特異的に結合する人工DNAシャペロンを、現在、スクリーニング中である。 一方、この人工DNAシャペロンを用いてNiR遺伝子の発現調節を行う究極の目標として、硝酸同化代謝の流れを返えることを考えている。この遺伝子の発現制御を行った際に期待される現象として、生体内の硝酸イオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオン(硝酸同化代謝の中間代謝物)の濃度変化がある。そこで、植物細胞中の各イオン濃度の迅速、高感度分析を行う方法としてキャピラリー電気泳動イオン分析法を確立した(Kawamura et al.,1996)。6種類の植物において細胞内各イオン濃度を測定したところ、各イオン濃度が細胞種によって大きく異なっていることが分かった。このことは、人工DNAシャペロンによってNiR遺伝子の発現を制御することによって、生体内の各イオン濃度を変化させることが可能であることを示唆している。
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