研究概要 |
本年度はマイクロダイアリシス法による心筋エクト-5'-ヌクレオチダーゼ活性の評価方法を確立した.ラットを麻酔人工呼吸下に開胸し,心筋用に我々が開発したマイクロダイアリシス用プローブを左心室筋層内に装着した.プローブをマイクロインジェクションポンプに接続し,タイロード液を毎分1μlで灌流しながら,15分毎に採取した透析液中にアデノシン濃度を測定した.アデノシン濃度は高速液体クロマトグラフ法(HPLC)により測定し,結果は本科研費で購入したHPLC解析システム(ADInstruments・PowerChrom)を装着したコンピュータにより解析した.タイロード液灌流下のアデノシン濃度は,プローブ装着直後には高値を示したが次第に減少し,定常状態では0.51±0.09μM(n=16)であった.そこでエクト-5'-ヌクレオチダーゼの基質であるAMP(100μM)をプローブを通して灌流するとアデノシン濃度は9.79±0.08μM(n=12)へと著明に増加した.しかし,エクト-5'-ヌクレオチダーゼ阻害剤であるα,β-methyleneadenosine 5'-diphosphate(100μM)存在下にAMP(100μM)を添加してもアデノシン濃度の増加は認められなかった(0.76±0.12μM,n=8).また,各種濃度(10μM-1mM)のAMP添加によりアデノシンは濃度依存性に増加し,そのEC_<50>は107.2μMであった.この値はin vitro実験で報告されているラット心筋エクト-5'-ヌクレオチダーゼのK_m値に近似している.これらの実験結果は,プローブより一定量のAMPを灌流しながら同時測定したアデノシン濃度が,心筋エクト-5'-ヌクレオチダーゼを反映していることを示唆するものである.
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