研究概要 |
高地適応モデル動物の開発のために、低酸素性肺血管収縮(HPV)現象に注目して行った。HPVは哺乳動物に共通して見られる現象であるが、その反応の大きさには個体差および種間差が著しい。そして、この反応の鈍い個体ほど高地環境に対して強いことが推測される。そこでこのHPV反応の違いに注目して、ラットを用いて極端に反応の大きい系統と逆に極端に反応の小さい系統の2系統選別し、高地適応のモデル動物の開発を試みることにした。平成8年度は現在開発されているラットの系統の内、LEW/SSN(n=7),F344/N(n=7),WM/MS(n=3),WKAH/HOK(n=7),WF/N(n=3)およびSD(n=27)の6系統について摘出潅流肺標本によるHPV反応の大きさの比較を行った。その結果、6系統の中で最も大きな反応を示した系統はWKAH/HOKの15.3±2.1mmHgで、逆に最も小さかった系統はF344/Nの4.8±1.6mmHgであった。平成9年度は今までの6系統とは別に、Crj:Donryu(n=2),Crj:Wistar(n=4),Crj:CD(n=4),BN/Crj(n=5),F344/Ducrj(n=4),LEW/Crj(n=5),FOK(n=8)の7系統について追加実験を行った。その結果、7系統中最も大きな反応を示した系統はCrj:Wistarの11.0±4.2mmHgで,逆に最も小さかった系統はF344/Ducrjの2.2±0.9mmHgであった。以上の結果より,Wistar系が最も反応が大きく,F344が最も反応が小さいことが明らかとなった。この結果は前年度結果と一致し,信頼性の高いものと考えられる。
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