本年度は、生体内の計測に応用可能なリポゾームの作成と蛍光寿命の測定方法を確立し、温度に感受性を持つ蛍光物質の選定を行った。各種の蛍光物質を包含するリポゾーム懸濁液の蛍光寿命をin vitroにおいて計測した。 微小血管内のリポゾームの挙動を蛍光顕微鏡によりin vivo観察したところ、直径8μm以下のリポゾームであれば赤血球と同じ流速で毛細血管および細動静脈内を流れ、血管閉塞の原因とはならないことが明らかになった。ただし、巨大リポゾームは血液中の半減期が15分程度と短いため、10時間以上の半減期を持つ直径0.4mm程度のリポゾームを用いた計測も行った。 当初の計画では、高輝度キセノンランプとバンドパスフィルターを組み合わせて各種の蛍光物質の励起波長に対応する予定であった。しかしながら、蛍光寿命の測定に十分な光量と時間応答性を確保するにはレーザー光源が必要となった。そのためにアルゴンレーザーを購入し、高速シャッターとしてAO(Acousto-Optic)変調器を採用した。光電子増倍管を用いたフォントカウンティングによって蛍光測定を行い、蛍光の減衰曲線より蛍光寿命を測定した。 アルゴンレーザーの励起波長で用いうる蛍光物質として、rutheniumと錯体を形成するpyridine phenanthrolineなどの化合物を含む数種類の蛍光物質や、燐光を発するfluorescein化合物を選び、その温度感受性を試した。全ての蛍光物質で温度感受性を持つものの、温度以外の因子によって蛍光寿命が大きく影響を受ける場合が多く、温度についての測定精度が十分得られていない。来年度は燐光を発する蛍光物質をさらに試す予定である。
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