研究概要 |
1.ラットジョイニングペプチド(rJP)に対する特異的ポリクローナル抗体をウサギを免疫して作製し,ラット脳におけるジョイニングペプチド(JP)の分布を免疫組織化学的手法を用いて調べた.JPはメラノサイト刺激ホルモン(MSH)やβ-エンドルフィンと同一の前駆体蛋白(POMC)から等モル生成されることが知られている.ラットをコルヒチン処理して軸索輸送を阻害すると,JPは視床下部弓状核および延隨孤束核の神経細胞体に分布が認められた.これは現在までに報告されているMSHやβ-エンドルフィンの分布と一致する.コルヒチン非処理のラット脳では,神経細胞体の染色は弱く,密な神経線維の染色像が脳室周囲核から血圧調節の中枢と考えられている視床下部室傍核の領域に認められ,またその他の視床下部領域および扁桃核,手綱核などのストレス反応に関与すると考えられている領域に広範な神経線維を投射していることが認められた. 2.JP受容体に関する研究計画はラジオアイソトープの使用に関して本年度は制限があり,実施できなかった.来年度JPの脳膜画分の結合活性等について引き続き研究を継続したい. 3.上記の様に視床下部弓状核のPOMCニューロンは視床下部室傍核の支配を受けており,そのシグナルはコルチコトロピン分泌ホルモン(CRH)により伝えられると考えられている.しかしCRHが室傍核ニューロンの末端から直接下垂体門脈系に分泌され,脳下垂体前葉からPOMCホルモンを分泌する系はすでに明らかで,ストレス反応の中心的な役割をになっていると考えられているが,脳内での神経ペプチドとしてのCRHの役割は明らかでない.今回,切り出した視床下部組織からのJPの放出を測定したところ,正常ラットではCRHによるJPの放出は認められなかったが,高血圧自然発症ラット(SHR)ではCRHによるJPの分泌が観察された.SHRはストレスに過剰反応する動物として知られており,ストレス反応と関連している可能性がある.
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