本研究では日本におけるヒトエ-リッヒア症(いわゆる腺熱)の媒介動物をマダニ類と予想し、野外で採集したマダニ類からエ-リッヒアを含む種々の微生物を分離し、それらの抗原性および微細構造学的特徴を明らかにすることによって、本症の媒介動物を解明することを目的とした。 本年度はまず腺熱好発地である九州中部(八代市および水俣市)〜南部地方(宮崎・鹿児島県境および都井岬)でマダニ類を旗振り法によって採集した。その結果、水俣市近郊の山林でタカサゴチマダニ5個体、宮崎・鹿児島県境でフタトゲチマダニ11個体、また都井岬でフタトゲチマダニ16個体、タカサゴチマダニ6個体、ヤマアラシチマダニ3個体およびタカサゴキララマダニ1個体を採集し得た。これらマダニ類を研究室に持ち帰り、産地別、種類別および発育段階別に分類し、数個体ずつのマダニをプールして乳剤を作成した。そのうちの数系統を実験用マウスに接種し、現在はこれらマウスの発病の有無を追跡している。しかしながら、採集個体が当初の予想より少なく、研究材料としては十分な量ではなかった。また、マダニ類の自然感染率は低いものと予想されている。 したがって、次年度もマダニ類の採集に努め、供試個体を更に増やすことに重点をおいて研究を進めたい。また、マダニ類の採集と平行してエ-リッヒアの保菌動物と考えられる野鼠類をも捕獲する計画である。野鼠類からのエ-リッヒア分離にも成功すれば本症の媒介サイクルの解明にも繋がるものと期待している。
|