研究概要 |
我々は,Tリンパ球の機能的分化に対する抗原プロセッシングの重要性を解明するため,マウス皮膚リーシュマニア症を用い,システインプロテアーゼの一つであり抗原提示細胞リソゾーム内に多く存在するカテプシンBの機能を抑制することによるTリンパ球の機能的分化の方向性への影響を検討した。 BALB/cマウスにリーシュマニア感染と同時にシステインプロテアーゼ阻害剤であるE64を投与したところ,対照マウスでは感染は進行し病変部位の腫脹が見られるのに対し,投与マウスは同部位の腫脹が見られず,感染に対し抵抗性を獲得していた。この現象は,カテプシンB特異的阻害剤であるCA074を投与しても同様に観察された。このマウスにおける血清中原虫特異的抗体を測定したところ,IgG1とIgEが対照群のそれと比較して減少していた。一般にTh1型はIgG2aの,Th2型はIgGIやIgEの産生を増強させると考えられているため,CA074投与マウスでは本来のTh2型の優位性が低下していると考えられた。さらに、カテプシンB阻害剤投与マウスでは対照マウスと較べてIFN-γ産生が増加し,IL-4産生が減少していた。これは,Th2型優位の対照マウスと比較して,CA074投与マウスでは相対的にTh1型が活性化されているためと考えられた。これらのことから,リーシュマニア・メジャー感染においてCA074を投与することでTリンパ球の機能的分化の方向性はTh2型からTh1型へと変化することが示された。 リーシュマニア・メジャー感染マウスにおいて,カテプシンB特異的阻害剤CA074によりTh1型の抵抗性Tリンパ球への分化が誘導されることが示された。このことは,抗原プロセッシング酵素の一つであるカテプシンBがTリンパ球の機能的分化に関与していることを示唆するものであり,さらに,カテプシンBが,Th2型Tリンパ球を誘導する抗原プロセッシングに関与している可能性を示唆するものである。
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