研究概要 |
ヒトTリンパ腫瘍株であるJurkatからdegenerate PCRプライマーを使ったPCR法を用いて、新規チロシンホスファターゼ(PTP)遺伝子のクローニングを行った。その結果、1436アミノ酸からなるタンパクをコードする新規受容体型PTP遺伝子(hPTP-J)をクローニングすることに成功した。この新規PTP(hPTP-J)の細胞外領域は、1個のMAM(meprin,A5,μ)様ドメイン、1個のイムノグロブリン様ドメイン、4個のフィブロネクチン様ドメインから構成され、その細胞外領域には、2個直列に連結したPTPドメインが認められた。このようなドメイン構成からhPTP-Jは、II型の受容体型PTP(RPTP)サブファミリーに属する新しいPTPであることが明らかとなった。hPTP-Jは、II型RPTPに属するRPTP-κ及びRPTP-μと高い相同性を有していた。RPTP-κとRPTP-μは、細胞間接着分子としての性格を有することから、hPTP-Jも同様の機能を有すると考えられる。hPTP-J遺伝子の発現は、骨格筋で発現が高く、前立腺、膵臓、胎盤で中程度であった。一方、Jurkat細胞株では高いhPTP-J遺伝子の発現が認められたものの、末梢血リンパ球、胸腺、脾臓ではその発現がほとんど検出できなかった。さらに、Jurkat細胞株におけるhPTP-J遺伝子の発現は、PMAまたはカルシウムイオノフォアの刺激によって著明に低下した。したがって、PMAあるいはカルシウムイオノフォアが影響を及ぼすシグナル伝達経路がhPTP-J遺伝子発現の調節に関与していることが示唆される。
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