研究概要 |
科学研究費1996年度使用報告; サリン被曝者4名については、3名はサリン被曝から10日間、残る一名は、10ヵ月余にわたって観察をおこなった。さらに他の病院に入院していた者6名については、入院から4日後から10日にわたって、観察をおこなった。観察項目は血清コリン・エステラーゼ(ChE)、赤血球アセチルコリン・エステラーゼ(AChE)、尿中サリン代謝物(IMPA,EMPA,MPA)等であった。何れの者も被曝後初期にはChE,AChE値の低下を認め、さらに被曝後3日目前後にはIMPA,EMPA,MPA、フッ素などの尿中レベル上昇を認めた。さらに驚いたことには、重症者では被曝後10日以上を経て再びIMPA,MPA、フッ素のレベルが上昇したことである。更には、この時、一過性にChEやAChEの低下まで起った。この事は、どういう意味をもつのかは現在の所、不明であるが今後の研究に待ちたい。尚、本研究で新しいことは、サリン代謝物の測定にガスクロマトグラフ・FPD法を用いたことである。これについては、1997年3月にJ.Chromatography B.に投稿しているが、その帰趨はいまだ不明である。何れにせよ何らかの形で学術誌に載ることは間違いない。なお、実際に蓋をあけて驚いたことはbiological monitoringをきちんと行った者は我々だけだった事である。さきの方法論が世に出れば、次は具体的事実をClinical Chemistryにでも載せようと考えている。人によってはLancet誌はどうかと言う者もあるが、特別にimpact factorsを意識しなくとも良いとおもっている。何れにせよ、biological monitoringを行っているのは我々だけと言う事実の重みは大きく今後のこの方面の規範となるべく努力を行っている次第である。
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