腎尿細管に存在するナトリウム依存性リン輸送担体(NaPi)は血中リンレベルの恒常性維持において中心的役割を担っている。すなわち、リン摂取量に応じてNaPi発現は厳密に調節されている。しかし、リン摂取量が適正な閾値を逸脱すると正しく調節されないことが考えられる。したがって、リン摂取量とNaPi遺伝子発現との関係を検討することによって適正リン摂取量を明らかにすることが可能である。そこで、血中リン濃度を調節するラット腎尿細管のナトリウム依存性リン輸送担体(NaPi-2)の発現におよぼす摂取リン量の影響について検討した。0.02%の低リン食でリン輸送活性は増加し、刷子縁膜(BBM)上にNaPi-2蛋白の発現増加が確認された。一方、1.2%の高リン食により急速なリン輸送活性の低下とBBMでのNaPi-2蛋白の減少が見られた。これはNaPi-2がBBMから細胞質へtranslocationした結果であった。高リン食から低リン食に変更して4時間では、NaPi-2mRNAレベルは変化することなく、BBMのNaPi-2蛋白は増加した。これらはサイクロヘキシミドやアクチノマイシンD処理によっても影響は見られなかったが、ミクロチューブの機能を障害するコルヒチン処理で認められなくなった。さらに、副甲状腺を摘出したラットにおいても同様の結果が得られた。したがって、腎NaPi-2の細胞質とBBMの局在は副甲状腺ホルモンを介することなく、血中リンレベルによりtranslocationが調節されている可能性が示唆された。以上より、血中リンレベルの調節はNaPi-2遺伝子の転写レベルでの調節と急速なNaPi-2蛋白のtranslocationにより調節されていることが明らかになった。
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