研究概要 |
乳幼児突然死症候群(SIDS)は乳児の主要な死亡原因の一つであるにも関わらず、未だに病因の明らかでない疾患群である。最近、病態の一つとして末梢気道閉塞の関与が指摘されているが、その形態学的な証明は困難である。そこで我々は、末梢気道に存在し様々な生理活性物質を産出する肺神経内分泌細胞(Pulmonary Neuroendocrine cells:PNEC)に注目し、その分布・性状等に関し、SIDSとの関連について報告してきた。 今回、SIDS末梢気道閉塞の関係をより明らかにすべく、気管支平滑筋に対して強く、かつ長い収縮作用を持つエンドセリンについて、抗ヒトエンドセリン-1抗体(抗ET-1抗体)を用いた免疫染色を試みた。 生後0-12ヶ月のSIDS児:15例、及び対象例(その他の原因で死亡した児):11例の剖検肺。ホルマリン固定パラフィン包埋薄切切片を用いて、抗ET-1抗体(PEN INSULA LABORATORIES,INC.);LSAB法にて検考を行った。SIDS児の肺では15例中4例に気管支上皮に陽性細胞が認められた。気管支平滑筋周辺部に染色性が示されたのは13例であった。一方対象例では上皮に染まる例はなく、気管支周囲に比較的強く染まるものが11例中1例、僅かに陽性を示すものが6例であった。 気管支領域でのエンドセリン-1の表出は、SIDS児においてより多い傾向があり、エンドセリン-1が気管支平滑筋の収縮〜末梢気道閉塞に関与している可能性が示唆された。しかしながら、陽性細胞の定量化や実際にPNECが産生・分泌しているか否かは、今後の検討課題である。
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