慢性関節リウマチ(RA)ではTNF、IL-1をはじめとする種々のサイトカインが過剰に産生され、これらが滑膜増殖、組織傷害に関与していると考えられている。サイトカインレセプターからのシグナル伝達にはスフィンゴミエリン-セラミド系やJAK-STAT系をはじめとする多くの経路が知られており特にセラミドは、TNFレセプター、IL-1レセプターのsecond messengerのひとつでありRAに深く関与していると考えられる。本研究では滑膜細胞におけるこれらのシグナル伝達経路の役割を解析した。細胞透過性セラミド(N-アセチルスフィンゴシン)は、PDGF添加無血清培地では10μM、5%FCS培地では50μM以上でRA患者由来培養滑膜細胞のDNA合成を阻害し、球状の形態変化を誘導した。この形態変化はセラミド添加4時間後より認められ、24時間後まではセラミド除去により可逆性であった。しかし、48時間後の時点では、Hoechst33258を用いた蛍光染色でクロマチンの凝縮、断片化を認め、フローサイトメトリー法(PI染色)ではDNA含量の減少が観察された。DNA電気泳動ではアポトーシスに特徴的なラダー形成が認められた。一方、TNFやIL-1でみられるようなDNA合成の促進効果は、セラミドには認められなかった。以上より、滑膜細胞においてセラミドはアポトーシスを誘導するメディエーターであり、TNFやIL-1による滑膜細胞増殖にはスフィンゴミエリン-セラミド系以外の経路が重要であることが示唆された。今後JAK-STAT系等の役割を解析していく予定である。
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