疲労とはなにか?疲労と疲労感の分子メカニズムについては未だ良く分かっていないのが現状である。最近、我々は、原因不明の強い疲労を主訴とする慢性疲労症候群(CFS)患者では、短鎖脂肪酸がカルニチンに結合した血液中アシルカルニチン(ACR)が著減しており、かつ疲労の程度とACRのレベルとは良く相関していることを見出した。 そこで、血液中ACRの生体内動態を解明すべく高エネルギーで極めて半減期の短い^<11>Cを用いてアセチルカルニチンを標識し、ポジトロンCT(PET)を用いて非侵襲的にサルやヒトにおける検討を行なった。その結果、1)生体には肝臓を中心とした血液中ACR制御機構が存在すること、2)アセチルカルニチンのアセチル基は脳に取り込まれ利用されていることなどの新知見を得た。 一方で、ACRが細胞のアポトーシス死を抑制し、アルツハイマー痴呆の進展を防御すること等が知られており、血清中ACRの減少や脳における取り込みの異常(局在の異常や量的異常)が疲労やひいては細胞機能異常と関連している可能性が考えられる。 最近、カロリンスカ研究所のCFS患者についてPETを用いて検討したところ、CFS患者ではACRの脳への取り込みの減少が認められ、この減少は脳局所血流の低下とは関連していなかった。現在、ACR取り込みの局在などの解析により、CFS患者にみられる種々の精神・神経症状と脳におけるACR代謝異常との関連を検討している。
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