研究概要 |
単球・マクロファージ系の樹立細胞であるU937細胞表面におけるCD14およびCD86の発現はphorbor myristate acetate(PMA)刺激により誘導された。PMAによって分化誘導されたU937はその培養上清中に種々のサイトカイン、即ちIl-1,Il-6,IL-8,TNFαを著しく産生することが認められた。このようなPMA刺激はU937細胞内での核内転写因子NF-kBの核内への移行を誘導することをelectrophoretic mobility shift assayによって確認した。そこで、NF-kBの抑制剤であるpyrolidine dithiocarbamate(PDTC)をあらかじめ投与しておくと、上記のPMAによるU937の活性化を抑えるのみならず、一部の細胞を細胞死(アポトーシス)に陥らせた。これは一連の細胞死シグナルのなかでも蛋白分解酵素であるcaspase-3の活性化によって起こっていることが、その酵素活性およびWestern blotによって確認された。PMA刺激はPDTCによるアポトーシスを回避する方向に働くことが示され、caspase-3の活性化そのものも抑制されることが解った。このようにして、PMA刺激時のU937細胞は活性化され、同時にNF-kBの発現を増強することによって、XIAPの発現を誘導しアポトーシスを回避するように働くことが解った。またこれらの細胞内メカニズムに基づいて、単球・マクロファージにPMA再刺激を行うことにより単球・マクロファージの寛容誘導の機構が示唆された。
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