研究業績の概要 各種肝癌細胞株より得られた上清画分標品を用いてTRAP (telomerase repeat amplefication protocol)法によりテロメラーゼ活性を測定し、活性が得られたことを確認した。 慢性肝炎から肝硬変患者に合併した肝細胞癌およびその前癌病変と考えられる肝内限局性病変を対象として針生検により標本を採取した。非癌部より採取された標品においてはテロメラーゼ活性は認められなかった。一方、腫瘍マーカーおよび画像診断より典型的な肝細胞癌と診断された症例から採取された標品においてはテロメラーゼ活性が認められ、肝細胞癌が疑われたが、組織学的に前癌病変と診断された症例では弱いながらも活性が認められる傾向にあった。 これらのことより、肝細胞癌はその癌化過程において本酵素活性を獲得し、癌化が進むに従って活性が高まることが確認された。本検討では、得られた肝細胞癌の組織学的分化度が高分化型が大部分であったため、悪性度により酵素活性が変化することは明らかにされなかった。この点に関しては今後さらなる症例の追加により検討が必要であると考えられた。また、慢性肝炎から肝硬変への進展において本酵素活性の変化により発癌の潜在性が高まるか否かに関しては、高感度測定系の確立により検討する課題であると考えられた。
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