今年度は、筋緊張性ジストロフィー患者(MyD)における糖蛋白糖鎖異常の機序を組織化学的手法及び生化学的手法を用いて検討した。MyD患者皮膚培養線維芽細胞のgalactose認識RCA-1lectin染色性は、特に核周辺細胞内小器官において、有意にcontrolと比して低下しており、免疫グロブリンGや赤血球膜と同様の糖鎖異常が培養皮膚線維芽細胞にも存在することを発見した。この観察結果より、糖鎖異常の機序が遺伝子異常が原因となって引き起こされている可能性が強く示された。さらに、生検筋組織における筋核のsWGAレクチン染色性は、有意にMyD群で亢進しており、核膜にも糖鎖異常が存在する可能性が示唆された。また、昨年度、MyD患者生検筋組織において、galactose転移酵素の活性は低下していないことを発見したが、今年度は、糖ヌクレオチド濃度を、赤血球、線維芽細胞、生検筋組織のおのおのに関して、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。結果は、UDP-GlcNAcの濃度の有意な上昇と、UDP-Glc/UDP-Galの低下を認め、MyDにおいて糖ヌクレオチドの代謝異常が存在し、糖鎖異常をきたす一因である可能性が示された。
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