心筋炎における微小循環系の細胞増殖機構とアポトーシスに関する研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08877110
• 研究機関: 富山医科薬科大学
• 研究代表者: 岸本 千晴 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (70169845)
• 研究分担者: 黒川 昌彦 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (80186527) ; 落合 宏 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (30018692)
• キーワード: ウイルス性心筋炎 / 拡張型心筋症 / 微小循環 / アポトーシス

研究概要

拡張型心筋症の発生機序は未だ明らかではないが、ウイルス性心筋炎との関連が注目されている。申請者は、これまでにマウスにおけるウイルス性心筋炎の研究において、一酸化窒素ラジカル(NO)は、スーパーラジカルとの反応により消費されると血管拡張が阻害され心筋の微小循環不全を引き起こすものと報告してきた。そこで本研究ではマウスのコクサッキーB3ウイルス性心筋炎のモデルで、NO合成酵素阻害剤であるn-nitro-l-arginine methyl ester(_L-NAME)を投与して、微小循環系の細胞増殖とアポトーシスについて検討した。その結果、Coxsackievirus B3をマウスに接種し心筋炎を惹起し、_L-NAME、_D-NAME(_L-NAMEの低活性型鏡像体)および生理的食塩水をそれぞれウイルス接種日より14日間投与する群(viremic stage)と、ウイルス接種後14日目より14日間投与する群(aviremic stage)に分け、心筋組織病変、心筋ウイルス量、各組織重量について比較した。
1)培養したD1細胞(マウスのマクロファージのcell line)にサイトカインで刺激後L-NAMEを投与し、coxsackievirus B3ウイルス量に与える影響をプラーク法にて定量した結果、NOの抗ウイルス作用が証明された。
2)病理学的検討では、冠動脈の微小血管を観察し、心筋炎マウスでspasm様病変が存在した。
3)_L-NAME投与群で、微小循環系の細胞増殖が著名であった。
4)In situにおけるapoptotic cellsの証明をTUNEL法(nick end labeling)で検索中である。

研究成果

• [文献書誌] Hiraoki Y,Kishimoto C,Takada H,et al.: "Nitric oxide and myocarditis" J.Am.Coll.Cardiol.28. 1610-1615 (1996)
• [文献書誌] Kishimoto C,et al.: "HLA-DR antigen linkage in apical hypetrophic cardiomyopahy" Cardiology. 87. 488-491 (1996)
• [文献書誌] Takada H,Kishimoto C,Hiraoka Y,et al: "Captopril suppresses interstitial fibrin deposition in caxsaxievirus B3 myocarditis" Am.J.phcpiol.(in press). (1997)
• [文献書誌] Kishimoto C,et al: "Extracellular motrix remodeling in coxsalevirus B3 myocarditis" Clin. Immunol. Immunopathol.(in press). (1997)
• [文献書誌] 平岡勇二,岸本千晴,白木公康: "コクサッキーB3ウイルス性心筋炎による心不全におけるスーパー抗原の意義とペプチド療法" 第1回(1995年度)日本心臓財団・ファイザー心血管病研究会. (発表). (1996)
• [文献書誌] 岸本千晴,他: "心筋炎による心不全における経口アルギニンの効果" 第61回日本循環器学会学術集会. (発表予定). (1997)
• [文献書誌] 岸本千晴: "心筋炎におけるサイトカインの挙動心筋炎とサイトカイン-特集-" 医葉薬出版株式会社(医学のあゆみ), 177:435-438 (1996)
• [文献書誌] 岸本千晴: "心筋炎とサイトカイン。心不全とサイトカイン-特集-" 総合医学社(循環器科Today), 1:81-85 (1997)