研究概要 |
虚血心筋血流分布に及ぼす交感神経伝達物質の効果を非放射性マイクロスフェアと蛍光X線分析法を用いて解析した。すなわち、両側迷走神経遮断およびβ受容体遮断の麻酔犬を用い,虚血心筋の局所血流分布を蛍光X線分析法にて測定することにより、心交感神経刺激時の虚血心筋血流分布に対する交感神経伝達物質の関与を定量的に解析した.両側星状神経節を2および20Hzで刺激すると、心筋の血流減少すなわち心筋虚血が発生し、同時にノルエピネフリンとニューロペプチドYのオーバーフローが生じた。これらの程度はすべて刺激頻度依存性であった.オーバーフローの程度はノルエピネフリンがニューロペプチドYより約30倍大であった。心筋血流量と局所ノルエピネフリン濃度との間には有意な相関が見られた.心筋血流量と局所ニューロペプチドY濃度間には,β遮断下では有意な相関は見られなかったが,αβ両受容体遮断下では有意な相関が見られた.交感神経刺激時の左室壁の内・外層部別の心筋血流比には有意な変化は見られなかった。ノルエピネフリンとニューロペプチドYを冠動脈内に投与した場合の心筋血流変化は,重量濃度ではノルエピネフリンとニューロペプチドYとはほぼ同等であり,モル濃度ではニューロペプチドYの作用が大であった.またこの時のニューロペプチドYの作用はα遮断薬で影響を受けなかった。すなわち、虚血心筋血流分布に及ぼす交感神経伝達物質の効果としては、内因性ニューロペプチドYの効果は同時に放出されるノルエピネフリンの効果によりマスクされていることが蛍光X線分析法を用いた実験によりあきらかとなった.
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