研究概要 |
小脳低形成、胎児発育遅延、進行性汎血球減少及び易感染性を示した先天性B細胞欠損症の乳児例を経験し、本症例の検体を用いて、ヒトB細胞の初期分化を制御するPAX5遺伝子(BSAP)の検討、B細胞分化抗原の検討およびアポトーシスの検討を行った。まず抹消血と骨髄血よりDNAとRNAを抽出し、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、PCR-single strand conformation polymorphism(SSCP)法でPAX5遺伝子の異常の検出を行ったが、異常は認められなかった。CD34,CD10,lamda-like,TdT,mbl,B29等のB細胞の早期に発現する分化遺伝子群の発現の検討も行ったが、これらの骨髄細胞における発現はほとんどみられず、B細胞の発生の初期における異常が示唆された。また、本人とその家族の末消血よりEBウイルス感染B細胞株を樹立を試みたが、繊維芽細胞の株は樹立できたが、EB-virusによるB細胞株の増殖はみられず、樹立できなかった。今後アポトーシスとの関連を調べるため、末消血と骨髄血を用いて、Fas,Fas-リガンド,p53,Bcl-2,BAXなどの遺伝子産物を蛋白レベルでの発現を検討する予定である。さらに、症例に認められた多系統の発生異常(小脳低形成、B細胞欠質など)は胎生期組織特異的な細胞アポトーシスの分子機構に基づくことを明確にするため、いくつかの基礎的検討を行う予定である。
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