平成8年度は、妊娠17日〜19日の家兎に頸動脈と頸静脈にカテーテルを留置し、血圧測定と採血および薬液注入を行ない、手術後48時間より、アンジオテンシンIIに対する血圧の反応性を調べ、最初の2日は基礎値とした。3日目(手術後5日目)より一酸化窒素合成酵素阻害剤としてLMNA (L-methyl-N-arginine)を蒸留水に溶解し、これを飲水として投与し、連日血圧の測定を行い、同時にアンジオテンシンIIに対する反応性を調べた。アンギオテンシンIIは留置した静脈カテーテルよりシリンジポンプで40ng/kg/minを10分間、引き続き80ng/kg/minで10分間持続的に投与し、この間、日本光電社製の観血的血圧測定装置で動脈カテーテルより持続的に血圧を記録した。テトラヒドロビオプテリン10mg/kgの静脈内投与による血圧は低下する傾向にあった。今後テトラヒドロビオプテリンの投与量と血圧の関係について検討し、人の妊婦においける血清及び尿中ビオプテリンの測定を行ない、妊娠中毒症におけるビオプテリン代謝の異常について検討する予定である。 また肺高血圧症については、ビ-グル犬の頸動脈と腹大静脈にカテーテルを留置し、血圧測定と採血および薬液注入を行なった。肺静脈にスワンガンツカテーテルを留置し、肺静脈圧を測定しながらスポンゼルを注入し、肺高血圧症を作成し、スポンゼルを注入後約30分で肺高血圧症が安定した段階で、テトラヒドロビオプテリンを10mg/kgの静脈内投与し肺動脈圧を記録した。この肺高血圧症モデルをECMOで治療すると、肺動脈酸素分圧の改善とともに肺動脈圧が低下した。この効果について一酸化窒素との関係を、肺動脈ガス分圧を変えてテトラヒドロビオプテリンの肺高血圧症モデルの治療効果を検討する予定である。
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