研究概要 |
妊娠中毒症については妊娠家兎に一酸化窒素合成酵素阻害剤としてLMNA(L-methyl-N-arginine)を飲水にまぜて投与し、妊娠中毒症モデルを作成し、テトラヒドロビオプテリン(BH4)10mg/kgの静脈内投与により血圧は低下する傾向にあったが、その効果は十分ではなかった。これは高血圧モデルの作成に一酸化窒素合成酵素阻害剤を使用した場合、補酵素としてのBH4は有効に作用しにくいと考えられた。そこで、食塩とデオキシコルチコイド(DOCA)により作成された高血圧ラット(DOCA-Saltラット)についてBH4の効果を調べたところ、BH4(10mg/kg)約4週間の経口投与で高血圧の発症の改善を認めた。また、人の妊娠中毒症妊婦における血清プテリジン分析では,ネオプテリンが高値でビオプテリンが低値であることが明らかとなり、妊娠中毒症におけるビオプテリン代謝の異常が示唆された。 肺高血圧症については、ビ-グル犬の肺動脈にスポンゼルを注入し、肺高血圧症を作成し、これをECMOで治療し、肺動脈酸素分圧と肺動脈圧に対するBH4の効果を検討した。肺動脈酸素分圧の低下とともに肺動脈圧が上昇し、酸素分圧の改善とともに肺動脈圧が低下したがこれは一酸化窒素の合成と関与していると推測し、肺動脈ガス分圧を変えてBH4(10mg/kg)を静脈内投与し肺動脈圧を記録した。この肺高血圧症モデルにおいて低酸素血症における肺動脈圧の上昇はBH4(10mg/kg)の静脈内投与により、有意に抑制された。 以上の結果より、BH4は一酸化窒素の合成異常による高血圧症において、一定の降圧作用を持つと考えられた。引き続き、妊娠中毒症におけるビオプテリン代謝の解明と肺高血圧症に対するBH4の効果を検討することが必要であると考えられた。
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