ヒトの内蔵心房錯位症候群における心臓の刺激伝導系は、正常とは異なり組織学的に、二つの房室結節の存在とsling of conduction tissucが知られている。著者は本症候群に合併する上室性頻拍の機序として、二つの房室結節とこれらを連結するsling of conduction tissueが興奮の旋回回路を形成していることを電気生理学検査及び、高周波カテーテルアブレーションを行い治療に成功し、初めて異常な形態が機能しており頻拍発作の原因となることを証明した。形態の把握とカテーテルアブレーションの技術の向上が薬剤抵抗性不整脈治療を可能にしたが、さらに異常な刺激伝導系の発生を知ることにより形態の理解を深め、治療技術の向上につながることを目的とする。レチノイン酸投与により誘発した内臓心房錯位症候群の実験モデル(マウス)あるいはiv/iv mouseの刺激伝導系の発生過程を抗Conncxin 40抗体、抗Conncxin43抗体、抗Conncxin45抗体を用いて解析するが、マウス胎仔の刺激伝導系はラット胎仔と異なり、従来の各種抗Conncxin抗体では染色が困難であることが判明したため、予備実験として、正常ラット胎仔における刺激伝導系の分布を把握するために、抗HNK-1抗体と抗Connexin43抗体を用いてラット胎仔の刺激伝導系の染色を試みた。またSlc:Wistarラットを用いてレチノイン酸を妊娠第8日に腹腔内投与し、内臓心房錯位症候群実験モデルの作成を試みた。マウス胎仔心に反応する抗Conncxin43抗体を得ることができたため、マウスとラットを用いて引きつづき検討する予定である。
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