有棘細胞癌細胞DJM-1のMT・MMP発現についてWestern blotで調べたところ接着状態では発現がみられ、エラスターゼで下床から剥離させると24時間で発現は全く見られなかった。 2.ヒト線維肉腫細胞HT1080の培養上清は潜在型MMP-2を含むことが知られているので、これを接着状態のDJM-1に加えると、MT・MMPの発現は30%増加した。即ち、HT1080の培養上清(多分、潜在型MMP-2)はMT・MMPをupregulateすることが分かった。 3.HT1080の培養上清を接着状態のDJM-1とヒト悪性黒色腫細胞株MMAc・SFに添加したところ、予想に反して両細胞とも剥離は起こらなかった。 4.しかしHT1080の培養上清の添加、僅か24時間でDJM-1とMMAc・SFのcell cycleはS期が著明に減少し、また^3H-thymidineの取り込みも激減した。 5.HT1080の培養上清の代わりにrecombinant human latent form MMP-2を高濃度でDJM-1とMMAc・SFに添加したが、これでも両細胞の剥離は見られなかった。しかし驚いたことにDJM-1は48時間でほぼ全滅した(trypan blue dye exclusion test)。MMAc・SFも72時間で死滅した。癌細胞膜上にあるMT・MMPによって潜在型MMP-2が活性型になり、これが両細胞を破壊したものと考えられる。潜在型MMP-2は癌細胞周囲の間質細胞が産生することが知られており、以上の結果から考えると生体は癌細胞に対し、それを排除すべく間質細胞が潜在型MMP-2を分泌しているものと考えられる。残り1年はこの殺癌システムについて更に実証すべく阻害剤TIMPを加えた実験、またgelatin zymography、MT・MMPのnorthern blot等を行う予定である。
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