【目的】既存の皮膚微小血管形態の観察手段には、血管内に色素、樹脂、バリウム等を注入する方法(いわゆるマイクロアンギオグラフィー法)がある。しかし、これらの方法は血流が停止した非生理的状態での血管走行の観察法であり、生理的条件下での経時的血流変化の評価は不可能である。一方、現在臨床で一般的に用いられている血管造影法では、そのX線強度や撮像系の性能に限界があり、直径約200μm以下の血管を描出することは困難である。そこで我々は、生理的条件下における新たな皮膚微小血管造影法の開発を試みた。 【方法】X線源には高エネルギー物理学研究所(つくば市)のシンクロトロンから得られた放射光を単色化したものを用いた。ヨード造影剤と周囲組織とのX線吸収の差が極大となるように、単色放射光のエネルギーレベルはヨードのK吸収端の直上(33.3keV)に設定した。この単色X線を被写体に照射し、蛍光板上の像をアヴァランシェ型ハイビジョンカメラシステムで撮影した。このシステムの空間分解能は30μmであった。被写体にはケタラールで麻酔したラット18匹(体重約400g)を用いた。大腿動脈から総腸骨動脈分岐部直下までカテーテルを挿入し、水溶性ヨード造影剤(イオメロン400)を注入し対側の下腹壁動脈を毎秒30コマの動画像として撮影した。 【結果】下腹壁動脈では内径約40μmまでの分岐の造影が可能であった。 【考察】本法は、従来のマイクロアンギオグラフィー法と比べ、経時的な血行動態が観察でき、さらに、既存の血管造影法に比べ、はるかに細かい血管まで描出できた。このように本法は生理的条件下での皮膚循環の評価に優れていた。
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