それ自体は抗癌効果も毒性もほとんどないが、放射線照射によって5-FUを放出する新規合成化合物、KPB13001とKPB13033のマウス腫瘍に対する効果について検討した。これらは5-FU骨格に有機化合物を側鎖として結合させたものであり、放射線照射によって有機化合物が遊離し、5-FUが放出される。本年度はこれらの化合物を単回照射の前に併用した場合の効果について検討した。実験には右大腿皮下に径9mmのSCCVII腫瘍を有するC3Hマウスを用い、腫瘍増殖遅延法によって効果を判定した。まずこれらの化合物単独の効果を検討したが、200mg/kgまでの投与量において、有意の腫瘍増殖遅延効果を認めなかった。次にこれらの化合物を15Gy単回照射の30分前に経口または腹腔内投与した場合の効果を検討した。いずれの化合物を投与した場合も、照射単独に比べて腫瘍増殖遅延効果を認めたが、治療効果比(enhancement ratio)は、KPB13001については50mg/kgの投与量で1.1、100mg/kgで1.2、200mg/kgで1.25-1.3程度、KPB13033については100mg/kgの投与量で1.1-1.2程度であると考えられた。薬物動態の検討では、SCCVIIを移植したC3Hマウスにこれらの薬剤を投与してから15Gy照射し、直後に血液および腫瘍中の5-FU濃度を測定した。いずれの化合物についても5-FUが検出されたが、期待したよりも低い濃度であった。したがって、次年度はこれらの化合物を分割照射と併用した場合の効果の検討とともに、照射効果の増強のメカニズムについての検討も必要であると考えられた。
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