密封小線源治療法は、遠隔操作式後充填装置における高精度化や高線量率微小線源の利用などによって、多様な病変部位への適用が進められつつある。細い誘導チューブの開発によって従来困難と考えられていた病巣への線源誘導が可能になり、たとえば血管内ないし血管周囲の病変に対する小線源血管内照射への応用もその一つである。小線源治療技術に共通する問題点として、(1)一般的に適切な線量分布を得るための適切なアプリケータ導入(刺入・挿入・留置など)方法の確立、(2)部位に応じた最適な手技の選択、などが挙げられる。これらを機器の側で保証するのがハードの信頼性の向上と線源移動の精密制御や線量分布計算の3次元最適化などによる治療精度の向上であるが、臨床的観点からのアプローチの当然重要である。 本研究では末梢大血管の閉塞性動脈硬化症に対する治療法として、IVRの基本手技として確立されているSeldinger法の応用による線源の血管内導入法の検討を軸に、種々の臨床応用を実施した。これには、骨軟部腫瘍に対する術中チューブ留置法、会陰部腫瘍に対するテンプレート法、可動部舌癌に対する局所麻酔下組織内チューブ刺入技術の応用とその治療成績の分析が含まれた。 本研究では血管内線源誘導経路として大腿動脈に挿入されたカテーテル総作用ロングシース(血液の逆流防止シールドの役割も果たす)を用い、Ir-192 microSelectron-HDR(Nucletron社)付属の気管支腔内照射用アプリケータチューブを逆行性に血管内挿入して、バルーン拡張術後の腸骨動脈狭窄部位に留置する方法を用いた。線量分布計算は所定の長さに対して直線近似の上で予め実施しアプリケータチューブ挿入状態での血管造影所見と先端の位置確認から直ちに照射パラメータを入力して血管内照射を行った。手技にかかわるトラブルは発生せず、その安全な施行に見通しが得られた。
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