最近我々が同定した新たなLDL受容体遺伝子ファミリー部分cDNA、Bの全構造の解明を目的に、ヒト脳cDNAライブラリーより、これまでに得たcDNA断片をプローブとして用い、クローニングを続行した。その結果、重複する複数のcDNA断片を同定、すでに翻訳蛋白C末端を含むLRP-B塩基配列を明らかにした。一方、N末端構造を同定するために、現在全長9kbのLRP-B塩基配列と推定されるアミノ酸配列を明らかにした。配列解析から、LRP-Bは巨大な細胞外領域(2500アミノ酸以上)、膜貫通領域さらに約100アミノ酸よりなる細胞内領域より構成されていた。全体構造は、多機能受容体LRP(LDL-receptor related protein)とほぼ同一であったが、LRP-細胞外領域のLDL受容体リガンド結合領域およびEGF前駆体領域内の繰り返し配列の回数が異なっていた。LRP-B各領域はLRPと約85%の同一性を示したが、細胞内領域はインターナリゼーションシグナルを有するにもかかわらず、ほとんど類似性を示さなかった。これらの結果は、LRP-Bのリガンド特異性はLRPと類似しているが、その細胞内受容体においてLRPと異なった性質を示唆した。また、LRP-Bはノーザンブロット解析より脳、筋肉に最も発現していた。さらに合成ペプチドを用いた特異抗体を用いた蛋白解析により、LRP-BはLRP同様二つの部分に切断、細胞膜上に100kDaと約500kDaのジスルフィド結合により結び付いた膜蛋白であることが推測された。こららの結果から、LRP-Bは、LRP同様、脳apoE受容体として神経細胞代謝に関与し、疫学的にすでに証明されたapoE遺伝子型とAlzheimer病との関連に新たな機能を介し関与している可能性がある。今後、全塩基配列の同定と、培養細胞を用いた機能解析さらにジーンターゲッチングによる変異体解析を予定している。
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