研究概要 |
リポタンパクを構成する重要なタンパクであるアポB100ならびにアポB48は同一の遺伝子にコードされmRNA editingという転写レベルでの非常にユニークな制御を受けて発現していることが知られている.このうち食餌性のリポタンパクにはあぽB48が含まれ,小腸特に空腸で発現していることが知られている.しかし他の種において小腸上皮においてのアポB100の発現が報告されており,我々はヒト小腸での発現の検討ならびにその意義についての解析を進めている.そこでまずヒト小腸でのアポB100の発現を検討するための(1)免疫組織学的(2)分子生物学的解析を行った. 1.免疫組織染色による小腸におけるアポB-100の存在の確認 食道,胃,小腸,大腸,肝臓の手術摘出標本を材料として用い,抗アポB-100モノクローナル抗体(アポB48は認識しない)を用いてSAB法(ストレプトアビジン-ビオチン法)にて免疫組織染色を施行した.その結果小腸特に空腸上皮細胞の核上部,及び陽性対象である肝細胞内に染色像が認められ,食道,胃,大腸においては染色像が認められなかった.これらの結果は空腸におけるアポB-100の存在を示唆するものと考えられる. 2.ドットブロットによる小腸におけるアポB-100の発現の確認 空腸手術摘出標本よりハンクス液を用いた腺管分離法にて空腸上皮細胞を単離した.次にグアニジン法にてRNAを抽出し,ランダムプライマーにてcDNAにした後,PCR法にてアポB100遺伝子中のmRNA editing部位をはさむ部分を特異的に増幅した.同様の方法でHepG2 cellからもcDNAを得た.一方アポB100,アポB48遺伝子を持つプラスミドをコントロールとして用いた.これらを用いアポB48ならびにアポB100を特異的に認識するラベルしたオリゴDNAプローブを用いドットブロットを行った.その結果小腸上皮ではアポB48のみならずアポB100mRNAも発現していることがわかった. 今後小腸におけるアポB100の意義特に食餌由来の脂質輸送との関係について検討する予定である.
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