ソマトスタチンにより腫瘍の増殖が抑制されることが明らかとなっているがその詳細な作用機序は未だ不明な点が多い。そこで本研究においては、5種類のソマトスタチン受容体遺伝子を利用して、ソマトスタチン受容体発現細胞株を樹立し、その細胞株を用いてそれぞれの受容体と共役する細胞内情報伝達系を明らかにする事によりソマトスタチンアナログによる腫瘍増殖抑制機構を解明する事を目的とした。まず、内分泌腫瘍において高頻度に発現の認められたSSTR1およびオクトレオチドに対して最も高親和性を有するSSTR2の2種類のソマトスタチン受容体遺伝子サブタイプをそれぞれ発現ベクター(pCMV6b)に組み込んだ。このプラスミドDNAをネオマイシン耐性遺伝子とともに、Chinese hamster ovary(CHO)細胞にリポフェクチンを用いてトランスフェクションし、G418を負荷することによりそれぞれ12個ずつの細胞株を得た。これらの24個の細胞株についてソマトスタチンとの結合実験を行い目的のソマトスタチン受容体を発現する細胞株を選別した。さらにソマトスタチン負荷時の細胞内cAMP濃度を測定することにより、ソマトスタチン受容体を大量にかつ機能的に発現する細胞株確立した(CHO-SSTR1)。またSSTR2発現細胞株についてはソマトスタチンとの結合は認められたが、cAMPの低下は認められなかった為、さらにGi1遺伝子を導入したところcAMPの低下が認められたため、この細胞株をCHO-SSTR2とした。このようにしてSSTR1およびSSTR2を発現する細胞株の樹立に成功した。この2つの細胞株にソマトスタチンを負荷しMTTアッセイを行った結果、MTT活性の低下は認められなかった。さらに現在ソマトスタチン負荷時のMAPキナーゼ活性を測定中である。
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