研究概要 |
本年度の研究成果は、マクロファージ増殖に際し、酸化LDL中のリゾリン脂質の取り込み経路として、スカベンジャー受容体の重要性を明らかにしたことである。具体的には、酸化LDLによるマウス腹腔マクロファージの増殖に対するマレイル化ウシアルブミン(M-BSA)の作用を検討すると、マクロファージの増殖は、M-BSAにより70%抑制された。このM-BSAの抑制作用を検討するために、酸化LDLおよびリゾリン脂質の細胞取り込みに対するM-BSAの効果を検討すると、酸化LDLのマクロファージによる取り込みは、M-BSAにより完全に抑制された、また酸化LDLからマクロファージへのリゾリン脂質の以降はスカベンジャー受容体を介する特異的な取り経路のみ抑制された。次に、スカベンジャー受容体(SR-AI,SR-AII)ノックアウトマウス由来腹腔マクロファージの酸化LDLにより増殖を検討すると、野生型同腹マウス由来マクロファージの30%であった。以上の結果から、酸化LDLによるマクロファージ増殖に際して、スカベンジャー受容体(SR-AI,SR-AII)を介するリゾリン脂質の細胞内への特異的な取り込みの結果、何らかの増殖シグナルが生じる可能性が示唆された。しかし、スカベンジャー受容体(SR-AI,SR-AII)ノックアウトマクロファージも酸化LDLによって増殖すること、およびマクロファージ増殖が百日咳毒素によって抑制される予備実験の結果から、SR-AIおよびSR-AII以外のマクロファージ増殖に関与する酸化LDL受容体の存在が示唆された。
|