ksGCはキナーゼ類似領域を含むという、これまでに知られていないユニークな構造の可溶型グアニル酸シクラーゼであるが、その機能や活性化機構については不明である。このksGCの生体内での役割や、情報伝達機構を明らかにする目的で、本年度はほ乳類におけるksGCの構造と発現組織を調べた。また、ksGC蛋白を大腸菌で合成し、その活性を調べた。 ラットksGCのcDNAを用いて、ヒト遺伝子ライブラリーからヒトksGCクローンを単離し、その部分構造を明らかにした。ヒトksGC遺伝子は膜結合型グアニル酸シクラーゼの細胞内領域に高い相同性が認められ、膜型グアニル酸シクラーゼの一つであるナトリウム利尿ペプチド・レセプターの第13番エキソンより後部の部分に対応していた。エキソン-イントロンの構成は他のグアニル酸シクラーゼと非常によく似ていた。 ksGCのラットおよびヒトでの発現をノーザンブロットとRT-PCRを用いて調べた。ラットでは肺、腎臓、骨格筋に多く発現が見られ、他に消化管、胸線、網膜、鼻粘膜、舌に発現が認められた。ヒトでは肺、腎臓、胎盤、腸管に発現が認められた。このことからksGCは腎臓、肺などでの循環調節や、筋収縮の過程、あるいは感覚器系での情報伝達などに関与していると推測される。 また、ラットksGCのcDNAクローンをGST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)との融合蛋白合成用のプラスミドに組み込み、大腸菌に発現させた。発現蛋白を精製し、cGMP合成活性を調べた。その結果、融合蛋白として予想される分子量約6万6千の蛋のが発現が見られた。この発現蛋白のcGMP合成活性は、MgあるいはMn、どちらの存在下でもコントロールとの差が認められなかった。このことから、ksGCの活性化には何らかの補助因子が必要なのではないかと考えられた。
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