1.MLF1遺伝子発現について、細胞株を用いたRT-PCR法による定量化を各種造血器疾患例に適応すると、AML全体の約25%において強い発現を示し、特に、FAB分類におけるM0・M1・M2の比較的未分化な段階で高頻度に認めた。骨髄異形成症候群(MDS)ではRA・RAEBに比べ明らかにRAEB-Tで強発現し、MDS病態から白血病移行に伴い発現が漸次増強することを示した。また、AMLではMLF1強発現群において明らかに予後不良であった。 2.造血器細胞株にNPM-MLF1、野生型MLF1およびcontrol vectorを過剰発現させ、その形質変化を観察したところ、NPM-MLF1により細胞分化阻害と細胞死が誘導されることを見いだした。また、細胞死は未分化骨髄球系細胞株のみで誘導可能であり、やや分化傾向のある段階では誘導されなかった。細胞死の過程において、アポトーシス関連遺伝子産物の発現が、誘導あるいは阻害されるかを検討した。内在性のアポトーシス関連遺伝子産物については変動を認めないが、過剰発現させた系においてNPM-MLF1による細胞死が救済されることを見いだした。 3.考察:MLF1遺伝子の臨床的検討から、MDS病態から白血病移行への指標および予後因子として臨床応用可能と考えられた。また、NPM-MLF1による骨髄系細胞株における細胞死の誘導の実験系から、NPM-MLF1は幹細胞に非常に近い段階で造血系に影響を与えると考えられ、アポトーシス関連遺伝子産物の強制発現により細胞死を回避しうる事実は、t(3;5)転座の臨床病型をin vitroにおいて説明しうる。以上は野生型MLF1の正常造血機構における機能異常の反映と考え、現在、MLF1の正常機能についてMLF1相互作用蛋白とともに解析中である。
|