1.方法Wistrar雄ラット12週齡を使用。マイクロスフェア-(アクリル製、直径20〜30μm)(MS)を生理食塩水にて5x10^6/mlに調整、これを以下に示す濃度に希釈し投与した。右腎摘出し、腹部大動脈を左腎動脈起始部よりやや下で穿刺後、徐々にMS懸濁液0.5mlを注入して多発性腎小梗塞巣を作成した。ラットは以下の5群に分けた。I群:生食0.5ml注入、II群:MS溶液を生食で5倍に希釈し、0.5ml注入、III群:10倍希釈、IV群:20倍希釈、V群:40倍希釈。MS注入後、前、2、4、8、12、16、24、28週の時点で、体重、尿蛋白、血清Cr、Alb、T-cholを測定。I・II群で、前、4、8、12週にて血圧を測定し、II群でMS注入前後の腎血流量を測定した。また、経時的に屠殺、4%パラフォルム固定後、PAS染色標本作成。PCNA陽性細胞は、モノクローナル抗体PC10を用い、酵素抗体法にて染色。 2.結果(1)尿蛋白はMS用量依存的に増加し、II群12週で73.3mg/日に達した。(2)血清CrはII群で12週後、III群で28週後に有意に上昇した(各々2.13±0.46、1.62±0.24、正常0.65±0.03mg/dl)。(3)II群の血清Albは8週後より有意に低下、T-cholは4週後より有意に増加(12週でAlbはI群4.4±0.06、II群3.8±0.15g/dl、T-cholはI群74±3、II群174±19mg/dl)。(4)血圧は12週後にII群で有意に上昇(I群127±5mmllg、II群146±6mmllg)。(5)腎血流量はMS5倍希釈液投与後ほぼ1/3に減少。(6)PCNA陽性細胞数は2週及び8週で有意に増加。(7)組織学的に最も特徴的な像は、梗塞成立早期から健常組織の間に散在する萎縮尿細管と基底膜の輪状肥厚であり、これらの細胞はしばしばPCNA陽性であった。 3.結論MS注入により用量依存的に進行性腎不全モデルが作成された。大量の蛋白尿が腎機能の悪化に先行、組織学的にはヒト末期腎不全に類似した散在性のネフロン脱落が認められた。障害尿細管の周囲組織に対する影響を検討するのに最適のモデルと考えられる。
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