腫瘍特異的移植抗原(TSTA)及び、腫瘍拒絶抗原(TRA)の存在についてラットの肝癌細胞移植モデルを用いて検討した。 雄性Buffalo strain由来transplantable hepatoma cellを同系及び同種ラットの胸腺内に投与しその正着を観察した。またその2週後に末梢組織(腎被膜下、肝被膜下、皮下)に1x10^5個の癌細胞移植を行い、組織学的及びY染色体に対する特異的プライマーを用いたPCR法により癌の生着を観察した。同系移植(recipient:Buffalo)では肝癌細胞1x10^5個投与により癌細胞は胸腺に生着し、引き続き末梢組織に移植された肝癌細胞の生着が確認された。しかし末梢血、脾臓、リンパ組織にはPCR法にても癌細胞は検出できなかった。胸腺内癌細胞非投与群では末梢組織への移植癌細胞の生着は認められなかった。同種移植(recipient:Fisher)ではALS及びFK506投与下で1x10^6個の胸腺内移植癌細胞は胸腺に生着したが、末梢組織に移植された癌細胞はいずれも生着しなかった。以上により腫瘍拒絶抗原を認識するT細胞が胸腺で成熟し、癌細胞に対しても胸腺実質内でのnegative selectionが作用することを証明した。 また臨床においては、アドリアシンを含む抗癌剤多剤併用療法が無効な乳癌術後再発症例に対し、癌特異敵養子免疫療法を施行し、良好な成績を報告した。
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