研究課題/領域番号 |
08877190
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
片岡 健 広島大学, 医学部・附属病院, 助手 (50263702)
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研究分担者 |
吉岡 伸吉郎 広島大学, 医学部, 助手 (30284194)
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キーワード | モリス肝癌細胞株 / バッファローラット / 胸腺内前投与 / 癌関連抗原 / 癌拒絶抗原 / ペプチド / CTL |
研究概要 |
近年、腫瘍特異的移植抗原(TSTA)及び、腫瘍拒絶抗原(TRA)の存在が報告され移植免疫と癌免疫の関連性が議論されている。胸腺はT細胞成熟のpositive/negative sellectionの場とされ、我々はラット胸腺髄質内に抗原を投与により、その抗原に対する特異的トレランスを誘導できることを観察している。これは胸腺におけるアロ反応性T細胞のdeletion mechanismによると考えられている。本研究ではラット肝癌細胞移植における癌細胞生着における胸腺の役割について検討した。 まずLewisラットのDEN誘導性hepatoma cellを同系ラットの胸腺内及び末梢組織(腎被膜下、肝被膜下、皮下)に投与すると胸腺でのみ生着が得られ、肝癌細胞にも強いTSTAやTRAが存在するが、胸腺は癌細胞の移植においても免疫学的に隔絶された場所であることを証明した。 次に雄性Buffaloラット由来hepatoma cell(1x10^5)を同系雌性Buffaloラットの胸腺内に投与し生着を確認後、2週後に腎被膜下、肝被膜下、皮下にhepatoma cell(1x10^5)の癌細胞移植を行い、組織学的及びY染色体に対する特異的プライマーを用いたPCR法により癌の生着を観察した。胸腺内癌細胞投与群でのみ、胸腺及び引き続き移植された末梢組織に癌細胞の生着が確認された。しかし末梢血、脾臓、リンパ組織に癌細胞は検出できず、腫瘍拒絶抗原を認識するT細胞が胸腺で成熟し、癌細胞に対しても胸腺実質内でのnegative selectionが作用することを世界で初めて証明した。また末梢組織生着群で末梢組織に移植する直前に胸腺摘出すると癌の生着は認められず、癌細胞の胸腺による免疫寛容の維持には胸腺の存在が不可欠であることを証明した。同様に同種移植においても検討したところ、免疫抑制剤投与下で癌細胞は胸腺のみに生着した。 腫瘍が免疫学的監視を免れて発育する機序には胸腺トレランスが強く関与し、担癌患者ではTRAを認識するT細胞が胸腺実質内でnegative selectionを受けていることが示唆された。
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