p53の標的遺伝子であり細胞増殖を負に調節する作用を持つWAF1遺伝子を転写の段階で活性化させる薬剤、主として酪酸を主に用いて実験を進めている.昨年度までにSP1エレメントがWAF1遺伝子プロモーター特異的な活性中心でありかつ酪酸に反応するエレメントであることを確認していた.さらにこの部位はTGF-βによっても活性化されることが明らかになりそのプロモーター内での重要性が示される一方で、ゲルシフトアッセイで実際にsp1、sp3がこのエレメントに結合することが示された.しかしながら、酪酸処理によるバンドパターンヘの影響はみられず、少なくとも、DNA結合性の調節によって転写調節しているのではないことが確認された.ここで更に、酪酸のデアセチレラーゼ阻害能に注目し、より特異的なデアセチレラーゼ阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)を処理したところ、興味深いことに、全く同じSp1部位を介してTSAはWAF1遺伝子を活性化した.このことよりアセチル化が、このSp1部位を介して特異的にWAF1を活性化する可能牲が示された.このようにアセチル化の関与が重要であることが示されたので薬剤のスクリーニングをこの方向で継続していく.
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