研究概要 |
本研究は、肝幹細胞、すなわち多分化能と自己複製能を持つ前駆肝細胞の純化・回収法を確立し、その機能解析を行うことを目的とする。本年度は、以下の二点について研究を行った。 1.in vivo肝幹細胞機能解析系の確立 β-galactosidase遺伝子トランスジェニックマウスをドナーとして肝細胞移植(コラゲナーゼで単離したドナー肝細胞を部分肝切除を施行したレシピエント脾臓内へ移植)を行い、術後X-gal染色により組織学的にドナー由来細胞動態を解析し、組織再建能を検討した。それらの結果は、Transplantation Proceedings(Conditions for the successful engraftment of hepatocyte progenitors injected into the spleen.Transpl.Proc.28:1857-1858,1996)に発表した。ところが、この実験系では導入遺伝子の細胞系列特異的な発現パターンが、本研究目的にそぐわないことが判明したため、CSA(C3H specific antigen)をドナーマーカーとする同様の肝細胞移植系を新たに確立した。 2.前駆肝細胞分画の同定 FACS(fluorescense-activated cell sorter)と蛍光標識モノクローナル抗体をもちいて、単離した肝細胞におけるc-kit、CD45、transferin receptorおよびFas抗原の発現を解析した(unpublished data)。その結果、肝実質細胞の分画化の指標として既存のモノクロナール抗体だけでは不十分であることが判明した。そのため、抗c-MET抗体の作成を試みた。FACS解析にもちいるため、細胞外ドメインを認識する抗体が必須である。そのため、c-MET細胞外ドメインと大腸菌チオレドキシンとの融合タンパクを作製、大量精製し、これを免疫原とした。現時点で、目的とするハイブリドーマの樹立がほぼ成された段階にある。今後、この抗体をもちいた肝細胞の分画化、およびそれらの細胞分画の機能解析を行っていく予定である。
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