研究概要 |
Tobは、CDK2とCyclin Eとの反応を抑制することにより細胞周期のG1 arrestを引き起こし細胞増殖抑制効果を持つ。 ヒト膵癌細胞AsPC-1,BxPC-3,SOJについてRNAを抽出し、Northern Blottingを行い、内因性Tob遺伝子の発現を検討すると、AsPC-1,BxPC-3,SOJの順で強く発現していた。また、Western blottingを行いタンパクレベルでも同様に、内因性Tob遺伝子の発現を認めた。Tob遺伝子を組み込んだAdeno virus vector(AdCA tob)を増殖させ、ヒト膵癌細胞にtransfectさせ、増殖抑制効果を検討した。AdCA tobのtiterは3.5×10^8cpf/mlまで高めることができた。MOI20では、SOJ,AsPC-1,BxPC-3の順で増殖抑制効果を認め、Western blottingにおいて抑制効果に比例してTobタンパクの発現増強を認めた。形態的にsnescenceな変化、すなわち膨化し細胞死の状態に陥っていた。 p53癌抑制遺伝子を組み込んだAdeno virus vector(AdCMV p53)をヒト膵癌細胞にtransfectさせ、増殖抑制効果を検討した。MOI5においても、SOJ,AsPC-1,BxPC-3いずれの細胞でも増殖抑制効果を認め、強力な腫瘍抑制作用を確認した。 膵癌による癌性腹膜炎は、臨床でよく経験する治療困難な病態である。SOJ,AsPC-1膵癌細胞をヌードマウスの腹腔内に注射し、癌性腹膜炎モデルを作成した。SOJを注入すると、16日目において腸間膜に腫瘍小結節を形成した。AsPC-1を注入すると、16日目において血性腹水を伴う多数の腫瘍結節を形成した。In vitroの抑制効果を基に、In vivoにおいて癌性腹膜炎に対するAdCA tobおよびAdCMV p53の治療効果を検討中である。
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