研究概要 |
(目的)細胞接着因子CD44には多数のvariant formが存在し、癌の転移,浸潤に関与するとされ,肺癌原発巣組織におけるCD44V6, V8-10の発現レベルは癌の悪性化,転移のマーカーとなる可能性があると報告されている.CD44の一部がsolublu form CD44(s-CD44)として血中に存在することにより,原発性非小細胞肺癌患者血中s-CD44H, sCD44V6を測定し,臨床病理学的因子との相関及び、腫瘍マーカーとして有用であるかを検討した.(対象、方法)原発性非小細胞肺癌患者87例(扁平上波癌31例,腺癌43例、大細胞癌13例),正常対照群28例の患者より血漿を採取し,Bender MedSystes社製s-CD44 std, s-CD44V6 ELISAKitを用いて血中s-CD44H, s-CD44V6を測定し、さらにs-CD44V6/s-DCD44Hの比をもとめた。(結果)1.扁平上皮癌において、健常者に比し、血中s-CD44Hは有意に低値を示し、s-CD44V6, s-CD44V6/H ratioは有意に高値を示した。腺癌、大細胞癌のついては有意差を認めなかった。2.s-CD44V6/H ratioは胸部X線無所見肺扁平上波癌(Occult)においても健常者に比し有意に高値を示した。3.s-CD44V6は扁平上波癌の腫瘍SIZEと正の相関を示す傾向にあったが、T因子とは相関を認めなかった。N因子、病理病期、分化度とは有意な相関を示さなかったが、分化度においてs-CD44V6, sCD44V6/H比が低分化になるに従い高値を示す傾向にあった。(結語)血中s-CD44V6, s-CD44V6/H ratioは原発性非小細胞肺癌のうち、扁平上皮癌において健常者に比し有意に高値を示した。さらにs-CD44 V6/H ratioは、胸部X線無所見肺扁平上皮癌すなわち早期肺癌においても有意に高値を示し、腫瘍マーカーとして有用である可能性が示唆された。
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