研究概要 |
心電QRSの高周波数成分の変動が、虚血の影響を受け、かつ心機能との有意な関連を有することを実験的に確認するためラット摘出心ランゲンドルフモデルを用いて以下の2つの実験を行った。 【実験1】虚血再潅流時の心電QRSの高周波数成分の電位変化が、開心術症例と同じく心機能と関連するかどうか検討した。ラット心(n=7)に対し20分の高K心停止再潅流を行った。心表面から得られる電位をフクダ電子VCM-3000を用いて、40-300Hzの高周波数電位と0-300Hzの低周波数電位(0-40Hzが主体)に分けた。心機能を左室±dp/dt,HR,rate-pressure-products(RPP)で示した。再潅流1分後より、30分後まで経時的に測定した。《結果》拍動再開直後は低周波数電位のみ高値を示し、他の指標(高周波数電位や心機能)は低値を示した。各電位は10分後にはほぼ心停止前値に戻り、心機能諸指標は80-90%に戻り、その状態が30分後まで継続した。ラットにおいても開心術と同じく、再潅流後の高周波数電位と心機能の回復は連動した。 【実験2】上記の機序を細胞内Ca過負荷の観点から説明が可能かどうか検討するため、持続Ca負荷による不全心を作成し高周波数電位と心機能の関連を調べた。ラット・ランゲンドルフ摘出心(n=7)に対し、大動脈直前の側管よりCa加Krebs-Henseleit液を20分間注入した。(CaCl_2:0.45mg/min)。《結果》Caの持続負荷により不全心が作成され、心機能と高周波数電位はいずれも徐々に低下した。持続注入の開始から30分後までの関連は、+dp/dtと高周波数電位(80-300Hz)で相関係数+0.714(p=0.0000),-dp/dtに対しては+0.777(p=0.0000)と有意な正の相関を示した。 以上の実験により、虚血再潅流や心不全の心筋動態評価における高周波数電位の有用性が認められた。
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