研究概要 |
放射線にて起こるDNA damageにより脳のastrocyteに発現が誘導されることが判明した新しいレセプターチロシンキナーゼDDR(discoidin domain receptor:Ptk-3)の機能を探る目的で,我々はまずこの遺伝子のgenomic structureを全長にわたりsequenceすることにより明かにすることを試みた.全長12,010bの塩基配列を決定し,これをGenBankに登録した(U48705).この遺伝子は15のexonと14のintronからなることが判明した.染色体上の座位を決定するために,radiation hybrid mappingを行いD6478から2.33cRの距離にあることが判明した.これは6p21.3の物理的位置に相当する.この遺伝子のpromoter領域の解析により,p53結合コンセンサスがあることが判明した.これは放射線にてこの遺伝子が発現される機序にp53が関与することを示唆している.そこで我々はp53にてDDRの発現誘導が起こるかどうかをAdenovirusを用いた細胞へのp53遺伝子導入でみた.この結果,p53によりDDRの発現誘導が起こり,放射線照射によりまずp53が誘導されることにより,二次的にDDR誘導が起こることが判明した.これらの結果は既に論文として発表した(FEBS Lett vol.398).これらの結果を受け,本年度はDDR発現の意義をさらに探るため,DDRのpromoter領域をluciferase assay vectorに組み込み,p53をAdenovirusで導入したときのDDR発現を検討すべく,実験を施行した.予備的結果ではp53発現によりluciferase遺伝子の誘導がみられている.また,DDRを強制発現させた際に細胞の放射線感受性がどのように変化するかを検討した.
|