近年、脳神経外科領域においては内頸動脈狭窄症などの血管病変に対する外科的手術の必要性が再検討されて来ている。本年度の研究目標はこの狭窄の主な原因である粥状硬化巣における血管平滑筋遊走及びマクロファージの増殖を促す増殖シグナル伝達経路と細胞周期の制御機構を明らかにする事にある。 in vitro levelでの実験では以下の結果が得られた。培養ウシ大動脈内皮細胞は10%FBS添加DMEMにて培養し、無血清DMEMにて24時間培養の後、粥状硬化巣に特異的なリン脂質の一種であるlyso-PCにて刺激した。lyso-PC添加DMEMにて15分-4時間刺激した後、転写関連遺伝子群の発現をノーザンブロット法にて検討した。また細胞核蛋白を抽出し、標識された転写関連タンパクをコードするコンセンサス配列を用いてgel shift assayを行った。その結果、Lyso-PC(無血清培地中10mM)刺激によりある種の転写関連遺伝子群の発現が用量および時間依存性に誘導され、蛋白レベルでもgel shift assayにてshift bandが認められた。今後はこの現象が転写レベルのものであるかをluciferase assayにて検討する予定である。
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