本研究の目的は、生物、医学上重要となっている生体内の温度分布を、磁気共鳴の方法を用いて非侵襲的に測定する新たな方法を開発するための基礎的検討を行うことである。磁気共鳴法を用いた生体内の温度の測定方法としては、水のケミカルシフト、縦緩和時間、拡散速度の温度依存性を利用したものが提案されてきた。本方法は、生体の誘電率の温度依存性に着目し、温度による誘電率の変化をイオン密度変化として捉え、変動電場によりイオンが移動するときに作る局所磁場を、MRIの信号強度に反映させることを基本原理とする。 平成9年度は昨年度の研究成果を踏まえて基礎的な核磁気共鳴実験度平行して、変動磁場の改良を行った。変動電場の強度や、周波数を上げると適切なフィルタリングが期待できず、効果的な電源のイズの抑制は困難であった。特に装置は既存のMRI装置Omega-CSI4.7T(ブルカ-社製)を用いて、変動磁場内でMRIを計測可能なコイルを作成した。このコイルを用いて塩化ナトリウムや塩化カリウム水溶液などを対象に、振動電場を与えたときの信号変化を調べた。振動磁場の強弱による明らかな信号の変動は観測されなかった。また本年度は温度をコントロールした水を環流したガラス管を試料に通し、試料内に温度勾配を作成した。この温度勾配を測定するために水の領域選択磁気共鳴スペクトルを用いて測定し、温度勾配を確認した。しかし、変動電場の強度や、周波数を変えても適切なフィルタリングが得られず、効果的な電源のイズの抑制は困難であった。このため、変動磁場による磁気共鳴温度(Thermal MRI)画像の妥当性について十分な検討は行うことができなかった。
|