1)手術侵襲におけるアポトーシスへの影響について可溶性アポトーシス成分の変動を周術期で検討した。対象手術は冠動脈バイパス術、食道切除再建術、肝部分切除術とした。測定項目は可溶性Fas、可溶性Fas-Ligand、可溶性Bcl-2のアポトーシスに関連する成分と手術侵襲程度を示すIL-6、コルチゾールとした。sFasは各手術群とも手術終了後に高値を示し、sFas-L、Bcl-2はほぼ一定の値を示すか、測定感度以下であった。sFasはIL-6、コルチゾールと同様の変化を示した。手術侵襲の可溶性アポトーシス成分への影響はsFasの変動がsFas-L、Bcl-2より大きく、かつ心臓手術侵襲での影響が大きいことが判明した。 2)敗血症性ショックの病態の形成について、敗血症性ショック患者の予後とNOX、サイトカイン、内分泌、アポトーシス反応との関連について検討した。敗血症性ショック患者の死亡群は生存群に比べサイトカイン反応、内分泌反応、アポトーシスの変化を示す種々のメディエータが高値を示す傾向が認められた。 3)肝の虚血再灌流障害における障害メカニズムの検討をラット肝虚血再灌流モデルを用いて検討した。肝障害モデルにおいては肝細胞の虚血のみでなく、アポトーシスが関与していることが、肝組織のTUNNEL法を用いた染色で証明され。同時にWestern Blot法でFasの増加が認められ、肝虚血再灌流にはFas-Fas-L系を介したアポトーシスの関与が示唆された。 4)肝虚血再灌流、上腸間膜動脈の虚血再灌流、敗血症のラットモデルで各病態に応じたサイトカイン反応、アポトーシス反応が異なり、種々病態で特徴があることが解明され、治療に応用されることが期待された。
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