平成10年度は以下の成果が得られた。 LNCaP cell lineから得られたc-mycのDNA sequenceはとくに問題がなかったが、これが蛋白質として正常に発現しているかは不明であった。c-mycのmRNAは細胞増殖に伴ってその発現が増加することが知られている。インテグリンα_6サブユニットの発現で見た場合インテグリンα_6サブユニットのプロモーターは細胞増殖に従いその遺伝子の発現を増加させるが、それにインテグリンα_6サブユニットのプロモーター内のc-mycの結合部位は関係しない。また1、25-dihydroxyvitamin D3はアンドロゲン依存性LNCaP cellでc-mycのmRNAの発現を抑制しない。またc-mycのmRNAは過剰に発現していた。サザンブロットではc-mycの遺伝子がre-arrangeしていたり、過度に増幅していたということがなかった。FISH法ではc-mycのシグナルはおおよそ4個あり、遺伝子の転座もしくは8番染色体の数的異常が示唆されたが、LNCaP cell lineは8番染色体を4個もっておりこのために4つのc-mycのシグナルが観察されたと考えられた。以上をまとめればLNCaP cell lineではc-mycのmRNAは過剰に発現しているが、その蛋白質の発現に関しては機能的に発現していない可能性があり、このLNCaP cell lineではc-mycの増殖における役割はそう重要ではないと考えられた。
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