研究概要 |
卵巣癌88症例(漿液性嚢胞腺癌23例、粘液性嚢胞腺癌9例、明細胞腺癌28例、類内膜腺癌19例、その他9例)の新鮮手術検体に対してHDRAを施行した。薬剤無添加群の発色が不良であった3例を除き85例が判定可能であり、判定可能率は97%と非常に高率であった。また、個々の患者から摘出した癌細胞はHDRAにおいてCDDPに対してそれぞれ異なる感受性を示し、IC_<50>値(50%阻害濃度)の平均は48.9μg/mlであった。そこでCDDPの最適Cut Off濃度の設定を試みた。CDDPに対するIC_<50>値の分布から累積有効率曲線を作成し、その近似式に臨床奏効率の文献報告値,33%を代入することのよりカットオフ濃度を算出した。その結果、CDDPの最適カットオフ濃度25μg/mlであった。次にHDRAによる感受性と臨床奏効度との相関を検討するため、不完全手術例33症例のなかで測定可能病変を有し、術後にCDDPを含んだ化学療法を施行した15症例について奏効度を調査した。その結果HDRAによるIC_<50>値が25μg/ml以下、即ちCDDP高感受性と判定された8例においてはCR2例、PR5例、NC1例であったのに対しIC_<50>値が25μg/ml以上の群ではCR1例、NC5例、PD1例であった。従ってCRおよびPRを有効と判定した場合、HDRAの真陽性率は88%、真陰性率86%、感受性88%、特異性86%、予測率87%であり、従来法と比較して非常に良好な結果であった。また十分なサンプル量が得られた高感受性群5例、低感受性群3例についてGST活性を検討したところ高感受性群は23.4±19.9mU/mg proteinであったのに対し低感受性群は788.8±461.4mU/mg proteinと有意(P<0.01)な差がみられたことから臨床においてもGSTが薬剤の感受性に関与していることが示唆された。
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