HDRAはCDDPの卵巣癌に対する臨床効果を予測率87%と高い確率で予測しうることが示唆されている。そこで、臨床での奏効度との高い相関が得られる一因を検討するためapoptosisに着目し、腫瘍片中に誘導されたapoptosisを免疫組織化学染色(TUNEL染色)により検出し、HDRAにより測定される薬剤感受性との関連性について検討した。HDRAでは培養期間中に腫瘍重量の増加が殆ど認められなかったことから、腫瘍細胞の増殖は最小限に止まるものと考えられた。そのため、HDRAにおけるapoptosisの多くは細胞増殖に依存しないものと考えられた。次にHDRAにおいてカットオフ濃度(25μg/ml)以下でCDDP高感受性と判断された症例で、薬剤無処置群ではapoptosis細胞はほとんど観察されなかったが、CDDP処理群ではapoptosis細胞が観察された。また、感受性の異なる卵巣癌検体2例についてCDDP6.25μg/mlで処理した場合、高感受性例ではapoptosis細胞が多くみられたのに対し、低感受性例では殆どみられなかった。そこで、各検体におけるapoptosisの発現率を調べ、HDRAにおけるCDDPに対する感受性とapoptosisの関係について検討した。高感受性例3例、低感受性例5例についてCDDP6.25μg/ml処理時の腫瘍細胞1000個あたりのapoptosis細胞数の割合をapoptotic indexとして両者を比較したところ、高感受性群の値は低感受性群に比べて有意に高く(P<0.01)、HDRAにおける感受性をよく反映していると考えられた。以上のことより、HDRAで測定される感受性は、細胞増殖抑制効果よりも主としてapoptosis誘導能をはじめとする殺細胞効果を反映していることが示唆され、これが臨床における奏効度とよく相関する一因と考えられた。
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