研究概要 |
メチレンブルー(MB)はグアニレート・サイクレース(GC)を抑制する作用をもつことが知られているが、我々はすでに、in vivoにおいて、MBの前投与により、鼻アレルギーの抗原特異的誘発反応が有意に抑制されることを確認している。この機序を解明するために、in vitroにおいて、抗原抗体反応によるケミカルメディエーター(ヒスタミン、ロイコトリエン)の放出に対する、MBの効果を検討した。手術時摘出した鼻ポリ-プを細切し、ダニアレルギー性鼻炎患者の血清(ダニIgE>100U/ml)にて、受動感作を行った。その組織を、0.2〜2μg/mlMBあるいは、コントロールとしてTyrodeの緩衝液中でincubateした後、反応上清中のヒスタミン量と、組織中のヒスタミン量を比較し、ヒスタミン遊離率を求めた。また、同様の方法で、反応上清中のロイコトリエン(LTB_4,LTC_4/D_4/E_4)量を測定し、ロイコトリエン産生量についての検討も行った。コントロールにおけるヒスタミン遊離率は、平均7.0%であり、MB前投与による、ヒスタミン遊離率の変化はみられなかった。一方、LTB_4の産生量はコントロールにて平均2.59pg/mg wet tissueであり、MBの前投与により、濃度依存性に有意な抑制がみられた。、LTC_4/D_4/E_4の産生量は、コントロールにて平均10.1pg/mg wet tissueであり、MB前投与による抑制はみられなかった。ヒスタミン、LTC_4/D_4/E_4は、平滑筋収縮作用、血管透過性亢進、鼻汁分泌促進作用を、またLTB_4は、細胞遊走活性をもち、鼻アレルギー遅発反応に関与すると言われている。今回の検討で、MBがLTB_4産生を抑制することが明らかになった。これによりMBが何らかの形でアレルギー症状を修飾していると推察されるが、in vivoにおける結果を説明するには尚十分でなく、今後更にMBと一酸化窒素または活性酵素との相互作用について追求したいと考えている。 上記の要旨は、第15回鼻の感染とアレルギーに関する国際シンポジウム(1996年9月,ゲント.ベルギー王国),第16回世界耳鼻咽喉科学会(1997年3月,シドニー,オーストラリア)にて発表した。
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