研究概要 |
一酸化窒素(NO)は、L-アルギニンを基質として、NO合成酵素(NOS)により産生され、気管支喘息においては、血管透過性や上皮線毛運動を亢進させるなど、アレルギー病態に関与しているとされている.我々のこれまでの検討では、鼻アレルギー患者でも鼻腔内NO濃度が上昇することを確認している.鼻アレルギーにおいてどのような細胞でNOが産生され、更にその際NOSのどのアイソフォームが関与しているのかについて、ヒトアレルギー性鼻炎及び非アレルギー性鼻炎患者の下甲介粘膜を用いて検討した.粘膜採取後、4% paraformaldehyde phophate buffer溶液にて、24時間浸漬固定し、20%sucrose phosphate bufferに浸漬、クライオスタットで厚さ5μの凍結切片を作成し、NOSの組織科学的染色及び、NOSの各アイソフォームに対する免疫染色を行った.NADPH-diaphorase組織化学的染色は、1mM β-NADPH、2mM nitro blue tetrazorium,0.3%Triton Xを含む0.1MPBS中で、37℃で、30〜60分間反応後、蒸留水にて洗浄、風乾後、エンテラン封入し、光学顕微鏡で観察した.誘導型NOS(i-NOS)、内皮型NOS(e-NOS)、脳型NOS(b-NOS)について、ラベルドSAB法にて免疫染色を行い、光学顕微鏡で観察した.非アレルギー性鼻炎の粘膜において、NADPH-diaphorase染色では、上皮細胞質、鼻腺、血管内皮細胞が陽性に染色された。免疫染色では、e-NOS、b-NOSについては、アレルギーの有無による明かな差を認めなかったが、i-NOSについては、アレルギーにおいて活性の増強が認められた.これらの結果より、鼻アレルギー病態における、NOの産生は、i-NOS発現によることが考えられ、さらに、このNOが、鼻粘膜病態に大きく関与していることが推察された. 上記の要旨は、第15回頭頸部自立神経研究会(1997年8月、大阪)、第36回日本鼻科学会(1997年11月、東京)にて発表した.
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