平成8年度は手術および生検標本の収集と同時に増殖能の検討を予備実験として以下の如く行った。鼻副鼻腔乳頭腫症例21例に対しMIB-1(Ki-67)抗体の免疫組織科学染色を行った。本抗体は細胞周期におけるG0期を除く増殖期に発現される抗原を検知する抗体であるが、鼻副鼻腔乳頭腫におけるMIB-1抗原の発現はいまだ報告されていない。そこで発育形式と細胞異型度につきその発現度を調べた。外方発育型7例では全細胞中の陽性細胞数は平均11.9%、内方発育型では30.1%であり、内方発育型の方が有意に発現率が高く増殖能の強さがうかがえた。また異型を認めるものは12例、平均33%、異型のないものは9例、16.8%でこれも異型が強い程増殖能が高いといえた。EVvirusゲノムの検出のため収集された標本は以下のごとくである。1)ホルマリン固定標本;副鼻腔乳頭腫6例、口蓋乳頭腫3例、扁桃乳頭腫3例、中咽頭乳頭腫1例、舌乳頭腫1例、喉頭乳頭腫1例。2)凍結標本;副鼻腔乳頭腫1例、上顎癌4例、喉頭癌3例、舌癌1例、上咽頭癌1例、中咽頭癌1例、下咽頭癌、頚部食道癌3例、甲状腺腫瘍14例、悪性リンパ腫7例、悪性線維性組織球腫2例、悪性黒色腫1例、エナメル上皮腫1例、神経芽細胞腫1例、小細胞癌1例、カルチノイド1例、神経鞘腫1例であった。平成9年度はこれらの腫瘍におけるEVvirusゲノムの検出を行い腫瘍原性の検討を行う。PCR法に加え固定標本については1994年にWangらによって発表されたcapillary based systemによるparaffin section in situ hydridyzation法を用いることを検討している。
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